専門学校の定員充足率と修学支援新制度|「5割未満」の意味と学科別に見る理由

  • 教育

はじめに

収容定員充足率とは

収容定員充足率は、在籍している学生の数を、学則で定めた収容定員で割った数字です。

収容定員充足率=在籍者数÷収容定員

たとえば、入学定員40人の2年制の学科なら、収容定員は80人です。1年生が20人、2年生が26人在籍していれば、在籍者数は46人で、収容定員充足率は57.5%になります。

よく混同されるのが、入学定員充足率です。こちらは、その年の入学者数を入学定員で割った数字です。

入学定員充足率=その年の入学者数÷入学定員

上の例では、今年の入学者20人を入学定員40人で割るので、入学定員充足率は50%です。

2つの数字の関係

収容定員充足率は、過去数年分の入学者の積み重ねで決まります。2年制の学科なら、今年と去年の入学者の合計、3年制なら3年分の合計です。

そのため、ある年の入学者が大きく減ると、その影響は翌年以降も在籍者数に残ります。逆に言えば、収容定員充足率を上げるには、複数年にわたって入学者を確保し続ける必要があります。1年だけ入学者が増えても、数字の回復には時間がかかります。

この記事でわかること

  • 収容定員充足率は、全学年の在籍者数を収容定員で割った数字です。その年の入学者だけを見る入学定員充足率とは別の数字です。

  • 修学支援新制度の機関要件では、専門学校は直近3年度すべての収容定員充足率が5割未満の場合、原則として支援の対象外になります。大学・短大・高専の基準は8割未満です。

  • 判定は学校全体で行われますが、全体を押し下げているのは特定の学科であることが多いため、対策は学科単位で考える必要があります。

【この記事の執筆・監修】

Pinmov ディレクター 三上 渉吾

地上波テレビ通販番組で6年間「売れる台本」を作り続けてきたプロフェッショナル。映像の綺麗さではなく、視聴者の行動を引き出しCPA(採用・獲得単価)を確実に下げるためのダイレクトレスポンス構成に特化。

修学支援新制度とは

高等教育の修学支援新制度は、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金を支給する制度です。大学、短期大学、高等専門学校、専門学校が対象になります。

学生が支援を受けられるのは、国や自治体の「確認」を受けた学校に在籍している場合に限られます。学校側が満たすべき条件を「機関要件」と呼びます。

機関要件の定員に関する基準

機関要件は、2024年度から見直されました。文部科学省が全国専修学校各種学校総連合会に示した情報によると、定員に関する基準は次のとおりです。

大学・短大・高専

直近3年度すべての収容定員充足率が8割未満の場合、原則として対象外になります。

ただし、直近の収容定員充足率が5割未満に該当せず、直近の進学・就職率が9割を超える場合は、確認の取り消しが猶予されます。

専門学校

直近3年度すべての収容定員充足率が5割未満の場合、原則として対象外になります。

ただし、地域の経済社会にとって重要な専門人材の育成に貢献していると、設置認可権者である都道府県知事等が認める場合は、取り消しが猶予されます。判断の基準の例として、他の教育機関による代替の困難性や、卒業生の地元就職率が示されています。

見直し前との違い

見直し前は、経常収支差額がマイナス、運用資産から外部負債を引いた額がマイナス、収容定員充足率が8割未満という3つの条件すべてに該当した場合に対象外となっていました。見直し後は、定員充足率の条件が独立し、それだけで対象外になり得る形に変わっています。

すでに支援を受けている学生はどうなるか

進研アドの教育情報サイトBetweenによると、学校が機関要件を満たさなくなって対象から外れる場合も、対象外になる前から支援を受けている学生は、引き続き支援を受けられます。影響を受けるのは、主にこれから入学する学生です。

確認申請書の読み方

修学支援新制度の対象校は、確認申請書を公表しています。多くの学校は、Webサイトの「情報公開」のページに掲載しています。

確認申請書には、学科ごとの次の数字が載っています。

  • 生徒総定員数(収容定員)

  • 生徒実員(在籍者数)

  • そのうちの留学生数

この2つの数字を割れば、学科ごとの収容定員充足率が出ます。学校全体の数字は、学科ごとの数字を足し合わせたものです。

読むときの注意点

  • 募集を停止した学科は、在籍者が残っている間は数字に含まれます。募集停止の学科を除いて見るほうが、今の募集の実態に近くなります。

  • 留学生が多い学科は、日本人の高校生からの入学者と、留学生の入学者を分けて見ます。どちらの層に向けて募集をするかで、打つ手が変わるためです。

  • 年度が明記されていないファイルもあります。最新の年度のものかどうかを確認してから比べます。

なぜ学科単位で見るべきなのか

機関要件は、学校全体の収容定員充足率で判定されます。しかし確認申請書を学科ごとに見ていくと、定員を超えている学科と、半分に届かない学科が、同じ学校の中に並んでいることがあります。

全体の数字を押し下げているのは、多くの場合、特定の学科です。

学校全体の広報を強めても、もともと人が集まる学科にさらに人が集まるだけで、集まらない学科の数字は変わらないことがあり得ます。人気学科の入学定員には上限があるため、全体の充足率を上げるには、集まらない学科の入学者を増やすしかありません。対策は、数字の低い学科に絞って考える必要があります。

背景にある18歳人口の減少

18歳人口は1992年をピークに減り続けています。PT-OT-ST.NETが報じた厚生労働省の資料では、大学の入学定員の規模が今のまま維持された場合、2040年の大学全体の定員充足率は70%台まで下がると推計されています。

18歳人口が減る中で、すべての学科が同じように減るわけではないと考えています。先に減るのは、職業が知られていない学科、学校に通わなくてもなれる学科、高卒就職と比べられる学科です。この3つの構造は、「専門学校の学生募集動画|定員が埋まらない学科は『職業』を見せる」(https://pinmov.jp/posts/vocational-school-student-recruitment-video )で、公的資料とあわせて詳しく解説しています。

学科の数字を見たあとにやること

  1. 確認申請書から、学科ごとの収容定員充足率を出す

  2. 充足率が低い学科を、「職業が知られていない」「学校に通わなくてもなれる」「高卒就職と比べられる」「学校内の人気学科と比べて埋もれている」のどれに当たるかで分ける

  3. 当てはまる構造に合わせて、動画で見せることを決める

3で作る動画は、校舎や設備を見せる学校紹介の動画とは役割が違います。違いは「学校紹介動画と職業紹介動画の違い」(https://pinmov.jp/posts/school-video-vs-career-video )で整理しています。

よくある質問

Q. 収容定員充足率と入学定員充足率はどう違いますか。

A. 収容定員充足率は全学年の在籍者数を収容定員で割ったもの、入学定員充足率はその年の入学者数を入学定員で割ったものです。機関要件で使われるのは収容定員充足率です。

Q. 専門学校の基準が5割なのはなぜですか。

A. 文部科学省の見直しでは、大学・短大・高専が8割、専門学校が5割と区分して示されています。専門学校については、都道府県知事等が地域の人材育成への貢献を認めた場合の猶予も設けられています。

Q. 学科ごとの数字はどこで確認できますか。

A. 修学支援新制度の対象校が公表している確認申請書に、学科ごとの生徒総定員数と生徒実員が載っています。多くの学校は、情報公開のページに掲載しています。

Q. 留学生は在籍者数に含まれますか。

A. 確認申請書では、生徒実員の内数として留学生数が記載されています。学科の数字を見るときは、留学生を含めた数字と、日本人の高校生からの入学者を分けて見ることをおすすめします。

Q. 1年だけ入学者が増えれば、充足率は回復しますか。

A. 収容定員充足率は全学年の合計なので、1年分の増加では回復しきらないことがあります。複数年にわたって入学者を確保する前提で、対策を考える必要があります。

まとめ

専門学校は、直近3年度すべての収容定員充足率が5割未満になると、修学支援新制度の対象から原則として外れます。判定は学校全体ですが、数字を押し下げているのは特定の学科であることが多く、対策は学科単位で考える必要があります。

まずは確認申請書で学科ごとの数字を出し、どの学科が、どの構造を抱えているのかを見極めるところから始めます。

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出典

  • 修学支援新制度の見直し:文部科学省から全国専修学校各種学校総連合会への情報提供「修学支援新制度の見直しについて」(令和5年2月)、進研アドBetween「直近3年間の収容定員充足率8割未満の大学等は修学支援制度の対象外に」

  • 修学支援新制度の概要:厚生労働省資料「高等教育の修学支援新制度について」(令和4年3月)

  • 18歳人口と充足率の推計:PT-OT-ST.NET(2025年10月31日)

三上 渉吾

Pinmov / 構成設計担当ディレクター

地上波の通販番組の制作に6年。100本以上の現場で、視聴者が動く構成と動かない構成の差を見てきました。
現在はPinmovで採用動画の構成設計を担当。全カットに設計意図を書いた台本を納品しています。

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