専門学校の学生募集動画|定員が埋まらない学科は「職業」を見せる

  • YouTube運用

はじめに

同じ校舎、同じ先生、同じ設備。それなのに、学科によって入学者の集まり方が大きく違う。

専門学校が公開している修学支援新制度の確認申請書には、学科ごとの生徒総定員数と生徒実員が載っています。これを学校ごとに読んでいくと、ある学科は定員を超え、隣の学科は半分に届かない。そうした学校は珍しくありません。学科ごとの数字の読み方と、学校全体への影響は「専門学校の定員充足率と修学支援新制度」(https://pinmov.jp/posts/vocational-school-enrollment-rate )で解説しています。

私は地上波の通販番組を6年間制作し、最初の数秒で何を見せ、どの順番で伝えれば人が動くのかを考えてきました。その目で専門学校の学生募集を見ると、定員が埋まらない学科の多くは、学校の魅力が足りないのではないと考えています。その学科が目指す職業が、高校生から見えていないのです。

この記事では、公的な資料をもとに、学科ごとの差を生む構造を3つに整理します。そのうえで、学科のタイプ別に学生募集動画で何を見せればいいのかを、60秒の構成例まで含めて解説します。

この記事でわかること

  • 定員が埋まらない学科には、「職業が知られていない」「学校に通わなくてもなれる道がある」「高卒で就職できる選択肢が広がった」という3つの構造があります。

  • この3つは、高校生が学校同士を比べるより手前で起きています。そのため、校舎や設備を見せる学校紹介の動画だけでは越えにくいと考えています。

  • 学生募集動画では、職業の中身、学校に通うと何が変わるのか、卒業時点でどこに立っているのかの3つを見せます。学科のタイプによって、どれを前に出すかが変わります。

【この記事の執筆・監修】

Pinmov ディレクター 三上 渉吾

地上波テレビ通販番組で6年間「売れる台本」を作り続けてきたプロフェッショナル。映像の綺麗さではなく、視聴者の行動を引き出しCPA(採用・獲得単価)を確実に下げるためのダイレクトレスポンス構成に特化。

定員が埋まらない学科に共通する3つの構造

構造1:職業そのものが知られていない

1つ目は、学科が目指す職業そのものが、高校生に知られていないという構造です。

臨床工学技士は、1987年に国家資格になった職種です。人工透析装置、人工心肺装置、人工呼吸器といった生命維持管理装置の操作と保守点検を担います。手術室、透析室、集中治療室で働く、医療に欠かせない仕事です。

言語聴覚士は、1997年に国家資格になった比較的新しいリハビリテーション職です。脳卒中や事故の後遺症、生まれつきの障がいなどで、話す・聞く・食べるといった機能に不自由を抱える人のリハビリを担います。

どちらも医療の現場では欠かせない仕事ですが、高校生が日常の中で、仕事の中身に触れる機会は多くありません。医療に関心のある生徒は看護師や理学療法士を思い浮かべ、機械に関心のある生徒は工学部を思い浮かべる。その間にある仕事は、どちらの候補にも入りにくいと考えています。

2025年10月に開かれた社会保障審議会医療部会では、厚生労働省が、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の養成施設の定員充足率が全国的に下がっていることを示しました。背景として、18歳人口の減少が挙げられています。18歳人口が減る中で、名前を知られていない職業ほど、進路の候補から先に外れていくと考えています。

理容師も、同じ構造を抱えています。2015年7月17日の厚生労働省健康局長通知で、理容師と美容師が行える施術の範囲が見直され、性別による区分けがなくなりました。翌2016年4月からは、理容師と美容師の両方の資格を持つ人だけで運営する店であれば、理容所と美容所を同じ場所で開設できるようになっています。一方で、理容師法が理容の方法として定める「顔そり」は、今も理容師の業務です。

こうした変化が高校生に伝わらないまま、理容師は「男性の髪を切る仕事」というイメージで、美容師と比べられているのではないでしょうか。

知らない職業は、比較の土俵にすら乗りません。

構造2:学校に通わなくてもなれる道がある

2つ目は、学校に通わなくてもその職業に就ける、あるいは資格を取れる道があるという構造です。

調理師免許の取り方は2つあります。都道府県知事が指定する調理師養成施設で1年以上学んで卒業する方法と、飲食店などで2年以上調理の業務に従事したうえで、都道府県の調理師試験に合格する方法です。

介護福祉士の国家試験も、介護福祉士養成施設を卒業するルートのほかに、3年以上の実務経験と実務者研修の修了で受験するルートがあります。

パティシエ、エステティシャン、ネイリストは、免許がなくても就ける仕事です。製菓衛生師は試験で取得する資格ですが、菓子をつくる仕事に就く要件ではありません。医療事務の資格も、すべて民間団体による認定資格で、求人に応募するときに必須ではありません。

介護福祉士養成施設の入学状況をまとめた資料では、2024年度の入学者6,546人の内訳は、新卒者等が3,084人、外国人留学生が3,054人でした。入学定員に対する充足率は58.8%です。2020年度の新卒者等は3,941人だったので、4年間で2割以上減っています。

こうした学科を検討する高校生にとって、問いは「その仕事に就けるか」ではありません。「学校に通うと何が変わるのか」です。この問いに答えていない募集物は、学校そのものがどれだけ魅力的でも、比較の段階で外されやすいと考えています。

構造3:高卒で就職できる選択肢が広がった

3つ目は、高校を卒業してすぐ働くという選択肢が広がっているという構造です。

厚生労働省の集計では、2026年3月に高校を卒業した生徒への求人倍率は4.12倍でした。高校新卒者向けの求人数は約49万9,000人、求職者数は約12万1,000人です。

事務、IT、販売の仕事に高卒で就ける選択肢が広がると、専門学校で2年学ぶ意味は、以前より具体的に示さなければ伝わりにくくなります。特に、情報処理、医療事務、ビジネス系の学科は、高卒就職と真正面から比べられる位置にあります。

なぜ学校紹介の動画だけでは越えにくいのか

校舎や設備、授業の雰囲気、在校生の笑顔を伝える学校紹介の動画は、すでにその分野に進むと決めた高校生が、学校同士を比べるときに役立ちます。

しかし、上の3つの構造は、学校を比べるより手前で起きています。

  • その職業を知らない

  • 学校に通う理由が分からない

  • 高卒で働く道と比べている

この段階にいる高校生にとって、校舎の広さや設備の新しさは判断材料になりません。まだ、その学科を比べる対象として見ていないからです。

高校生が出願するまでの流れを、私は次の5段階で考えています。

  1. 職業を知る

  2. 職業を進路の候補に入れる

  3. 学校同士を比べる

  4. オープンキャンパスに行く

  5. 出願する

学校紹介の動画が働くのは、主に3と4です。定員が埋まらない学科で人が止まっているのは、1と2だと考えています。1と2を担う動画を、ここでは職業紹介の動画と呼びます。2種類の動画の違いと使い分けは、「学校紹介動画と職業紹介動画の違い」(https://pinmov.jp/posts/school-video-vs-career-video )で詳しく解説しています。

学生募集動画で見せるべき3つのこと

1. 職業の中身

その仕事に就いている人が、現場で実際に何をしているのか。

見せるのは、完成品や結果ではなく、仕事の途中です。完成した髪型や料理、きれいになった歯は、高校生も日常で目にしています。知らないのは、そこに至るまでに、その職業の人が何をしているかです。

臨床工学技士なら、透析の開始前に装置を点検する手元。言語聴覚士なら、患者さんと向き合って発音の練習をしている場面。施工管理なら、朝礼で工程を確認し、職人に指示を出す場面です。

2. 学校に通うと何が変わるのか

実務で資格を取る道や、高卒で就職する道と比べて、学校で過ごす時間で何が手に入るのか。

ここは、言葉で説明するより、変化を並べて見せるほうが伝わります。入学直後の実習と、1年後の実習を同じ角度で撮って並べる。同じ料理、同じ移乗介助、同じカットを、入学直後と今でやってみせる。変化そのものが、学校に通う理由の証拠になります。

3. 卒業時点でどこに立っているのか

卒業生がどの位置から仕事を始め、今どうしているのか。

学校のパンフレットには、就職率や就職先の一覧が載っています。しかし高校生が知りたいのは、数字よりも、「自分が卒業したら、どこで何をしているのか」の具体的な姿だと考えています。卒業生本人が、働いている場所で、最初に任された仕事を一言で話す。それだけで、就職率の数字が、自分の将来に置き換わります。

学科のタイプ別:何を前に出すか

3つのうちどれを前に出すかは、学科がどの構造を抱えているかで変わります。

職業が知られていない学科

臨床工学、言語聴覚、作業療法、理容、施工管理、家庭犬の訓練士などです。

前に出すのは「職業の中身」です。学校の話は最後の数秒で十分です。まず、この仕事が世の中にあること、どこで誰のために働いているのかを見せます。

学校に通わなくてもなれる学科

調理、製菓、介護福祉、エステ、ネイル、医療事務などです。

前に出すのは「学校に通うと何が変わるのか」です。冒頭で、学校に通わなくてもなれるという事実を学校側から先に伝え、そのうえで、それでも通う理由を在校生の言葉で見せます。

高卒就職と比べられる学科

情報処理、ビジネス、医療事務などです。

前に出すのは「卒業時点でどこに立っているのか」です。高卒で入社した場合と比べて、卒業生がどの位置から仕事を始めているのかを具体的に見せます。

学科間の比較で埋もれている学科

同じ学校の中に、定員を超える人気学科と、そうでない学科が並んでいるケースです。ゲームと情報システム、グラフィックデザインとインテリアデザイン、美容と理容などが当たります。

人気学科は、高校生が日頃から作品やサービスに触れている分野です。そうでない学科は、完成品は見ていても、誰がどう作っているかが見えない分野です。学校の力の差ではなく、仕事の見えやすさの差だと考えています。この場合も、前に出すのは「職業の中身」です。

構成例:1年制の調理師科(縦型60秒)

「学校に通わなくてもなれる学科」の例として、1年制の調理師科の構成を秒数ごとに示します。

語り部

1年制の調理師科に通う在校生です。実習室で仕込みの手を止めずに、隣で見学している高校生に話しかける立ち位置にします。

カメラに向かって一人で説明させると、学校で撮る動画としては不自然になりがちです。誰が、どこで、何をしながら、誰に向かって話しているのかを、撮影前に決めておきます。

ターゲット

料理に興味はあるものの、進学するか、すぐに飲食店で働くかを迷っている高校2〜3年生です。

0〜3秒

在校生「免許だけなら、学校に来なくても取れるんだよね」 テロップ:調理師免許は実務2年+試験でも取れる 映像:仕込みをする手元

3〜10秒

在校生「じゃあ何で1年ここに通ってるかっていうと」 映像:包丁を動かす手元のアップから、実習室全体に引く

10〜25秒

入学を決めた理由を、本人の言葉で一言入れます。撮影前の聞き取りで拾った言葉を、そのまま台本に書き起こします。 例:「店に入ってから覚えるより、全部の基礎を1年でやってから入りたかった」

25〜45秒

入学直後の実習と、今の実習を並べます。同じ料理を同じ角度で撮ると、1年間の変化がそのまま伝わります。 テロップ:入学1か月目/入学10か月目

45〜55秒

卒業生が働く厨房で、本人がどの持ち場から仕事を始めたかを一言で話します。 テロップ:卒業生の勤務先と、卒業後何年目か

55〜60秒

在校生「この実習、オープンキャンパスで同じメニューを作れるよ」 テロップ:オープンキャンパスの日程と予約方法

この構成の考え方

冒頭は、学校にとって不利に見える事実から入っています。高校生がすでに知っているかもしれない「学校に行かなくても免許は取れる」を、学校側が先に口にする。そうすることで、その後の「それでも通う理由」を、売り込みではなく本音として聞いてもらえると考えています。

冒頭から最後まで、言葉か情報が常に動いている状態にすることも大切です。映像だけの区間を長く取らず、数秒ごとに新しい情報を出していきます。雑学やクイズで気を引くのではなく、見ている高校生本人の進路に関わる事実から入るのも、この構成の軸です。

同じ考え方で書いた台本として、「介護福祉学科の学生募集動画台本|志望者を動かす構成を秒数ごとに解説」(https://pinmov.jp/posts/student-recruitment-video-script-care )があります。

学生募集動画でよくある3つのつまずき

1本に全部を詰め込む

学科の特徴、設備、就職実績、学費、入試日程を1本に入れると、何も残らない動画になりがちです。1本の動画には、1つの問いと、それに対する1つの答えだけを入れます。見せたいことが複数あるなら、本数を分けます。

校舎の外観から始める

校舎の外観は、学校名を知っている人には確認になりますが、学校名を知らない人には何の情報にもなりません。冒頭の数秒は、見ている高校生自身に関わる事実か、在校生の本音に使います。

見た後の行動が決まっていない

動画を見た高校生に何をしてほしいのか。オープンキャンパスの予約か、資料請求か、SNSのフォローか。1本につき1つに絞り、最後に明示します。

できあがった構成の点検には、「採用動画の構成を直す5つのチェックポイント」(https://pinmov.jp/posts/recruitment-video-mistakes )が学生募集動画にもそのまま使えます。

撮影の前に学校と決めておくこと

  • どの学科の、どの職業を見せるか

  • その学科が、3つの構造のどれを抱えているか

  • 在校生が入学を決めた理由を、本人の言葉で

  • 卒業生の今。どこで、どの持ち場から仕事を始めたか

  • 動画を見た高校生に取ってほしい行動を1つ

学科ごとの定員と在籍の数字は、学校が公開している確認申請書にすでに載っています。どの学科から手をつけるかは、その数字から決められます。

制作にかかる費用の考え方は、「採用動画はいくらかかる?制作費用の相場と内訳を全公開」(https://pinmov.jp/posts/recruitment-video-cost )が参考になります。

よくある質問

Q. 学生募集動画は、どの学科から作るべきですか。

A. 確認申請書で公表している学科ごとの生徒総定員数と生徒実員を見比べ、差が大きい学科から作ることをおすすめします。学校全体の数字ではなく、学科単位で見ることが大切です。

Q. 学校紹介動画はもう作っています。追加で必要ですか。

A. 学校紹介動画は、分野を決めた高校生が学校同士を比べるときに使われます。職業そのものが知られていない学科では、その手前を担う職業紹介の動画が別に必要になると考えています。

Q. 在校生の顔を出さずに作れますか。

A. 作れます。手元や後ろ姿、声だけで構成する方法は、「社員が採用動画に出たがらない|顔出しなしで作る5つの型」(https://pinmov.jp/posts/recruitment-video-no-face )で解説しています。

Q. 縦型と横型、どちらで作るべきですか。

A. 高校生にSNSで見てもらうことを想定するなら、縦型の短い動画から作ることをおすすめします。オープンキャンパスの会場や学校のWebサイトで流す動画は、横型で作ることもできます。

Q. 動画の中で、学校に不利な事実を言っても大丈夫ですか。

A. 「学校に通わなくても資格が取れる」といった事実は、高校生が調べればすぐに分かることです。学校側から先に伝え、そのうえで通う理由を示すほうが、信頼されやすいと考えています。

まとめ

学科によって入学者の集まり方が違うとき、原因は学校の力ではなく、その学科が目指す職業の見えやすさにある場合があります。

  • 職業が知られていない学科では、職業の中身を見せる

  • 学校に通わなくてもなれる学科では、学校に通うと何が変わるのかを見せる

  • 高卒就職と比べられる学科では、卒業時点でどこに立っているのかを見せる

学校紹介の動画を作る前に、その学科がどの構造を抱えているのかを見極めることから始めます。

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出典

  • 臨床工学技士:医学書院「臨床工学技士の職務範囲とその現状」、鳥取県立中央病院 臨床工学室のページ

  • 言語聴覚士:スタディサプリ進路「言語聴覚士」

  • リハビリ職養成施設の充足率:PT-OT-ST.NET(2025年10月31日)による社会保障審議会医療部会の報告

  • 理容師・美容師:厚生労働省 平成27年7月17日健発0717第2号通知、島根県「理容・美容」のページ(重複開設)、理容師法第1条の2

  • 調理師:法務省資料「調理師制度の概要」、各都道府県の調理師免許のページ

  • 介護福祉士:法務省資料「介護福祉士の資格取得ルート」、資料「介護福祉士養成施設への入学者数と外国人留学生(令和2年度から令和6年度)」

  • 医療事務:ユーキャン「医療事務の資格」コラム

  • 高卒求人倍率:LOGI-TODAY(2026年5月18日)による厚生労働省の集計

三上 渉吾

Pinmov / 構成設計担当ディレクター

地上波の通販番組の制作に6年。100本以上の現場で、視聴者が動く構成と動かない構成の差を見てきました。
現在はPinmovで採用動画の構成設計を担当。全カットに設計意図を書いた台本を納品しています。

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