新卒採用で計画の半分も採れなかった中小企業が31.1%|中途12.8%との差はどこで生まれるか
採用動画
はじめに
採用がうまくいかなかった、と言うとき、その中身は2通りあります。あと少し足りなかったのか、ほとんど採れなかったのか。この2つは別の問題で、打つ手も変わります。
日本政策金融公庫総合研究所が2026年6月19日に公表した「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」を見ると、新卒と中途ではこの内訳がまったく違う形をしています。
新卒採用で予定の半分未満しか採れなかった企業は31.1%。対して中途採用では12.8%です。新卒の計画割れは「あと少し」ではなく「ほとんど採れていない」が主流です。
この記事では、同じ「計画割れ」でも新卒と中途で形が違う理由を分解し、新卒で母集団が作れない会社に何が起きているかを書きます。
この記事でわかること
新卒・中途それぞれの採用達成率の内訳と、その正確な数字
「約4割が計画割れ」という見出しが隠している、より重い事実
新卒が「全滅型」、中途が「惜敗型」になる構造的な理由
新卒に職種名が通じない理由と、そこで必要になる情報
中途が「あと少し」で止まるときに、どこを詰めれば届くのか
【この記事の執筆・監修】
Pinmov ディレクター 三上 渉吾
地上波テレビ通販番組の制作に6年間携わる。専門は、応募や購入につなげる動画の構成。現在はPinmovで、採用動画・広告動画・企業YouTubeの企画と構成を担当。
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数字を内訳まで見る
調査の結果をそのまま置きます。
日本政策金融公庫総合研究所「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」(2026年6月19日公表、2026年1〜3月期特別調査、調査時点2026年3月中旬、有効回答4,123社)の、採用者数が予定に対してどうだったかを尋ねた設問です。対象期間は2025年4月から2026年3月までです。
新卒採用(回答数1,139社)
予定の50%未満 31.1% 予定の50%以上100%未満 12.8% 予定どおり100% 51.7% 予定を超えた 4.4%
中途採用(回答数2,389社)
予定の50%未満 12.8% 予定の50%以上100%未満 19.6% 予定どおり100% 57.3% 予定を超えた 10.3%
計画割れした企業は、新卒が43.9%、中途が32.4%です。公庫の発表も「新卒採用で約4割、中途採用で約3割」という見出しを立てています。
ただし、合計だけを見ると重要な部分が消えます。
「約4割」より重い事実
新卒の計画割れ43.9%のうち、31.1%が「予定の半分未満」です。計画割れした企業の7割以上が、半分も採れていません。
中途は逆の形です。計画割れ32.4%のうち、半分未満は12.8%、半分以上100%未満が19.6%。半分以上は採れている企業のほうが多い。
同じ「計画割れ」でも、中身がまったく違います。
新卒は、採れないときはほとんど採れません。3人の計画で1人も採れない、5人の計画で1人だけ、という状態です。全滅型です。
中途は、採れないときでも半分は採れています。3人の計画で2人は採れる。惜敗型です。
この違いは偶然ではありません。採用の仕組みそのものから出てきます。
新卒が全滅型になる構造
一括で動くから、取り返せない
新卒採用には期間があります。説明会、エントリー、選考、内定。学生側のスケジュールが決まっているので、企業は同じ時期に同じ土俵で戦います。
この期間に母集団が作れなければ、年間を通して取り返す手段がありません。秋に気づいても、学生の多くはすでに進路を決めています。失敗が年単位で確定します。
中途は通年です。今月採れなくても来月がある。1人ずつ埋めていけるので、計画に届かなくても「半分までは行った」という結果になりやすい。
分母がゼロなら、選考は機能しない
新卒で半分未満しか採れていない企業の多くは、選考で落としているのではありません。そもそも応募が来ていません。
選考の精度を上げても、面接の質を上げても、分母がゼロなら結果は変わりません。新卒の計画割れは、ほぼすべて母集団形成の問題です。
ここが中途との最大の違いです。中途で「あと1人」が埋まらないのは、応募はあったが辞退された、条件が合わなかった、という選考後の問題であることが多い。打つ手が違います。
学生は会社を知らないところから始まる
中途採用の応募者は、その職種を経験しています。「施工管理」と書いてあれば、何をする仕事か分かります。だから職種名と条件だけで応募を判断できます。
新卒はそうではありません。働いたことがないので、職種名が意味を持ちません。
「製造スタッフ」と書いてあっても、何を作っているのか、1日のうちどのくらい立っているのか、1人でやるのか複数でやるのか、分かりません。分からないものには応募できません。
ここで学生が取りやすい行動は2つです。知っている会社に応募する。あるいは、条件が良い会社に応募する。どちらも中小企業が不利な軸です。
知名度では大手に勝てません。初任給でも勝ちにくい。初任給を上げる企業が43.4%で最多という状況は中小企業の採用で効果があった工夫の3位は「自社サイトの情報充実」|1位・2位との決定的な違いに書きましたが、全社が上げている中で自社も上げても、相対的な位置は変わりません。
新卒の母集団を作るために必要な情報
知名度でも条件でも勝てないなら、残るのは第三の軸です。「この会社で働く自分が想像できるか」です。
学生が応募を決める段階で足りていない情報は3つあります。
1日の流れ。何時に来て、何をして、何時に帰るのか。昼はどこで食べるのか。誰と話すのか。これは求人票に書けません。書いても読まれません。文字で読む情報としては細かすぎるからです。
一緒に働く人。特に、自分と年齢が近い人がいるかどうか。入社3年目の社員が何をしているかが見えると、3年後の自分が想像できます。会社概要からは分かりません。
できなかったときにどうなるか。働いた経験がない以上、できない状態から始まることは本人も分かっています。問題は、その状態がどう扱われるかが見えないことです。「最初は誰もできない」と文字で書いても、判断材料にはなりません。実際に教えている場面が見えると、意味が変わります。
この3つはいずれも、時間の流れと人の表情を含んだ情報です。文章と写真では落ちる部分が多すぎます。
中途の「あと少し」は別の場所で詰める
中途は惜敗型なので、打つ手も違います。半分以上は採れている。つまり応募は来ている。足りないのは最後のひと押しです。
詰める場所は2つあります。
応募前の離脱。求人サイトで条件を見て、会社名を検索して、自社サイトを見て、そこで離れる。この経路で失っている数は見えません。応募ゼロとして記録されるだけです。自社サイトに判断材料がなければ、ここで落ちます。
内定後の辞退。中途は在職中に転職活動をするので、複数社を並行して見ています。条件が同じなら、中身が見えたほうを選びます。
どちらも、条件を変えずに手を入れられる場所です。
業種によって状況は違う
ここまでは中小企業全体の数字です。実際の難易度は業種で大きく変わります。
介護は有効求人倍率4.08倍で、全産業の1.14倍とは別の世界にあります。詳細は介護の採用動画|有効求人倍率4.08倍で条件比較に埋もれないためにに書きました。介護の離職率が本当に高いのかという点については介護職の離職率は本当に高いのか|12.4%の内訳と若手の早期離職で数字を分解しています。
建設は29歳以下が11.7%という年齢構成の問題を抱えています。若手に選ばれるための設計は建設業の採用動画|29歳以下11.7%の中で、若手に選ばれる設計にまとめました。
よくある質問
Q. 新卒採用を諦めて中途に絞るのはありですか
判断材料として、この調査では中途のほうが計画を達成している企業が多い(100%達成57.3%、100%超10.3%)のは事実です。ただし中途は人材紹介エージェントの利用が28.5%あり、成功報酬が発生します。採用単価は中途のほうが高くなりやすい。短期の人数と中長期の単価のどちらを優先するかで答えが変わります。数字だけでは決められません。
Q. 新卒で応募が来ない場合、最初に手を入れるのはどこですか
応募が来ていないなら、選考ではなく「学生が会社を見る場所」です。求人票は条件しか書けないので、変えても差がつきません。自社サイトか、学生が実際に見ている媒体に、条件以外の情報を置くことが先です。
Q. 計画の立て方が甘いだけではないですか
その可能性はあります。ただし新卒で「予定の半分未満」が31.1%というのは、計画の精度の問題としては説明がつきにくい数字です。半分未満ということは、3人の計画で1人という水準です。計画が1人分甘かった、という話では届きません。
Q. 中途で半分以上採れているなら、大きな問題ではないのでは
採用単価で見ると問題です。半分しか採れていない状態で求人広告費やエージェント費用は発生しています。1人あたりのコストが2倍になっているということです。
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出典 日本政策金融公庫総合研究所「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」結果(2026年6月19日公表)

三上 渉吾
Pinmov / ディレクター
地上波テレビ通販番組の制作に6年間携わる。専門は、応募や購入につなげる動画の構成。
現在はPinmovで、採用動画・広告動画・企業YouTubeの企画と構成を担当。
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