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中小企業の採用で効果があった工夫の3位は「自社サイトの情報充実」|1位・2位との決定的な違い

  • 採用動画

はじめに

人を採るために何をすれば効くのか。この問いに、4,123社の回答から答えが出ています。

日本政策金融公庫総合研究所が2026年6月19日に公表した「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」で、人材募集で工夫したことの上位3つはこうなりました。初任給の引き上げが43.4%、未経験者・無資格者の積極採用が37.2%、自社ホームページの情報充実が25.5%です。

この順位をそのまま「1位をやるべき」と読むと、見落とします。1位と2位と3位では、必要なものが根本的に違うからです。1位と2位は原資か負担を差し出す施策で、3位だけが条件を変えずにできる施策です。

この記事では、3つの違いを分解したうえで、3位の「自社サイトの情報充実」が何を指すのか、情報量を増やすこととどう違うのかまで書きます。

この記事でわかること

  • 中小企業が人材募集で工夫したことの上位5項目と、それぞれの実数

  • 1位・2位と3位のあいだにある、原資と再現性の決定的な差

  • 採用経路のデータと重ねたときに見える、自社サイトの本当の役割

  • 「情報を充実させる」が、情報量を増やすことではない理由

  • 条件で勝てない会社が、条件以外で選ばれるために必要な設計


【この記事の執筆・監修】

Pinmov ディレクター 三上 渉吾
地上波テレビ通販番組の制作に6年間携わる。専門は、応募や購入につなげる動画の構成。現在はPinmovで、採用動画・広告動画・企業YouTubeの企画と構成を担当。


※テレビ通販の技術で視聴者の行動(CV)を引き出すPinmovのサービス詳細・事例資料は、お問い合わせフォームの内容欄に「資料希望」とご記入いただければお送りします。

調査の数字を正確に押さえる

まず数字そのものを置きます。

日本政策金融公庫総合研究所「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」(2026年6月19日公表、全国中小企業動向調査・中小企業編の2026年1〜3月期特別調査、調査時点2026年3月中旬、有効回答4,123社)の、人材募集で工夫したことに関する設問の結果です。

1位 初任給の引き上げ 43.4% 2位 未経験者・無資格者の積極採用 37.2% 3位 自社ホームページの情報充実 25.5% 4位 女性の積極採用 22.6% 5位 採用体制の強化 19.4%

この設問の回答数は1,776社で、5つまでの複数回答です。

ここで注意が必要です。複数回答なので、この%は「その施策を実施している企業の割合」ではありません。「工夫したこととして挙げた企業の割合」です。1社が最大5つ挙げているため、合計は100%を超えます。43.4%という数字は「4割の企業が初任給を上げた」ではなく「工夫を挙げた企業のうち4割が、その1つとして初任給引き上げを挙げた」と読むのが正確です。

数字の意味を取り違えると、このあとの判断がずれます。順位は「どれが多く選ばれたか」であって、「どれが一番効いたか」ではありません。

1位と2位に共通していること

初任給の引き上げと、未経験者・無資格者の積極採用。この2つには共通点があります。どちらも、何かを差し出す施策だということです。

初任給の引き上げが抱える二重のコスト

初任給を上げると、新しく入る人の給与が上がります。ここまでは意図したとおりです。

問題はその次です。初任給だけを上げると、2年目・3年目の社員の給与を新人が追い越します。そのままにすれば既存社員の不満が残ります。追い越させないためには、既存社員の給与も連動して上げる必要があります。

つまり初任給の引き上げは、新人1人分のコストでは終わりません。給与テーブル全体を押し上げる施策です。しかも一度上げた初任給は下げられません。来年も再来年も、その水準から始まります。

有効な施策であることは間違いありません。43.4%という数字は、それだけ多くの中小企業がここに踏み込んだということです。ただし、原資がある会社にしか選べません。

未経験採用は、採用の後ろにコストが移る

未経験者・無資格者を積極的に採る。これは応募の母集団を広げる施策です。経験者に限定していたときより、応募の対象が広がります。

ただし、採った後が始まりです。未経験者は戦力になるまで時間がかかります。その間の教育は、既存社員の時間を使って行われます。現場が忙しいから人を採ったのに、採ったことで現場の負荷が一時的に増える、という状態が発生します。

さらに、未経験で入った人の早期離職をどう防ぐかという問題が残ります。経験者と違い、未経験者は比較の基準を持っていません。「思っていた仕事と違った」が起きたとき、それが業界共通のことなのか、この会社だけのことなのかを自分で判断できません。

この2つは、どちらも正しい施策です。ただし原資か、現場の負担か、どちらかを先に差し出す必要があります。

3位だけが持っている性質

自社ホームページの情報充実。25.5%で3位です。

この施策には、1位・2位にない性質が3つあります。

ひとつ。給与も採用基準も変えずにできます。条件を据え置いたまま実行できる施策は、上位5つの中でこれだけです。4位の女性の積極採用は採用対象を変える施策、5位の採用体制の強化は社内の工数を使う施策です。

ふたつ。一度作れば効き続けます。初任給の引き上げは毎年原資が要ります。未経験採用は採用するたびに教育コストが発生します。これらはフローです。対して、作ったページは翌年も再来年も同じように機能します。ストックです。

みっつ。失敗したときの損失が小さい。初任給を上げて応募が増えなかった場合、上げた給与は戻せません。ページを作って効かなかった場合、損失は制作費と時間に限定されます。

ここまで読むと3位が最も有利に見えますが、そう単純ではありません。「情報を充実させた」と答えた企業が、実際に何をしたのかはこの調査から読み取れません。ここが分かれ目になります。

採用経路のデータと重ねると、役割が見える

同じ調査に、人材募集の経路を尋ねた設問があります(回答数2,722社、5つまでの複数回答)。

1位 求人サイト 55.3% 2位 ハローワーク 54.2% 3位 人材紹介エージェント 28.5% 4位 自社従業員からの紹介 28.1% 5位 自社のホームページやSNS 21.4%

自社サイトは、経路としては5位です。入口としては主力ではありません。応募者の多くは求人サイトかハローワーク経由で来ています。

ところが「工夫したこと」では自社サイトが3位(25.5%)に入っています。経路としての21.4%より高い。この差が何を意味するのか。

考えられるのは、自社サイトが「入口」ではなく「確認される場所」として効いているということです。

応募を考える人の行動を追うとこうなります。求人サイトで条件を見る。気になった会社の名前を検索する。出てきた自社サイトを見る。そこで応募するか離れるかを決める。

このとき、求人サイトのページには条件しか載っていません。給与、休日、勤務地、必要な資格。フォーマットが決まっているので、どの会社も同じ項目が並びます。条件が横並びで比較される場所です。

自社サイトは違います。載せる内容を自分で決められます。つまり、条件以外の情報を出せる唯一の場所です。

経路としては細くても、応募を決める直前に見られている。だから「工夫したこととして効いた」と答える企業が、経路としての比率を上回る。この読み方が成り立ちます。

「情報の充実」が情報量を増やすことではない理由

ここからが本題です。

自社サイトの情報を充実させるとき、多くの会社がやるのは項目を増やすことです。社長メッセージを載せる。事業内容を詳しく書く。福利厚生の一覧を作る。沿革を追加する。

これは量が増えただけで、応募を決める材料にはなっていません。

応募をためらっている人にとって、会社の歴史や事業の概要は、応募するかどうかの判断を動かしません。判断を動かすのは次の3つです。

自分が毎日何をするのか。求人票の職種名では分かりません。「製造スタッフ」と書いてあっても、何を、どこで、誰と、どういう段取りでやるのかは伝わりません。未経験者ならなおさらです。

一緒に働く人がどういう人なのか。会社概要には書けない情報です。入ってみるまで分からない、という状態が応募のハードルになります。

ここでやっていけるのか。仕事の大変さがどの程度なのか、自分の経験や体力で届くのか。ここが分からないと、応募する側はリスクを取れません。

この3つは、文章と写真では伝わりにくい性質を持っています。毎日の流れ、人の雰囲気、現場の空気。いずれも時間の流れと音を持った情報だからです。

採用動画が自社サイトで機能するのは、ここが理由です。綺麗な映像が必要だからではありません。文章では渡せない情報を渡すためです。

載せ方の具体は採用動画の掲載先の選び方|自社サイト・求人媒体・SNSの使い分けにまとめています。

順位をそのまま戦略にしない

最後に、この調査の使い方を整理します。

1位だから正しい、ではありません。初任給の引き上げが43.4%で1位なのは、それが最も多くの企業に選ばれた施策だということです。多くの企業が選んだということは、多くの企業が同じことをやっているということでもあります。全社が初任給を上げている中で自社も上げても、相対的な位置は変わりません。

同じことが定着の施策にも起きています。これは中小企業の定着策1位は賃上げ73.0%|全社が同じことをやっている中で差がつく場所に書きました。

3位だから弱い、でもありません。25.5%という数字は、4社に1社が「効いた工夫」として挙げたということです。しかも条件を変えずに実行できて、一度作れば効き続ける。原資に限りがある会社ほど、ここの優先順位は上がります。

自社の状況に当てはめるときは、こう考えてください。

初任給を上げる原資があるか。あるなら1位は有効です。ないなら、1位は選択肢から外れます。

未経験者を教育する余力が現場にあるか。あるなら2位は有効です。ないなら、採った人が育つ前に辞めます。

どちらもないなら、残るのは3位です。そしてこれは消去法の結果ではありません。条件で勝てない会社が条件以外で選ばれるには、条件以外の情報を渡す場所が要る、という構造から出てくる結論です。

業種別の状況は数字が違う

ここまでは中小企業全体の数字です。実際の採用は業種ごとに状況が違います。

介護は有効求人倍率4.08倍(全産業1.14倍)という極端な競争環境にあります。詳細は介護の採用動画|有効求人倍率4.08倍で条件比較に埋もれないためにに書きました。

建設は29歳以下が11.7%という年齢構成の問題を抱えています。詳細は建設業の採用動画|29歳以下11.7%の中で、若手に選ばれる設計に書きました。

新卒と中途でも、計画割れの起き方がまったく違います。これは新卒採用で計画の半分も採れなかった中小企業が31.1%|中途12.8%との差はどこで生まれるかにまとめています。

よくある質問

Q. 自社サイトを作り直せば応募は増えますか

サイトを作り直すこと自体では増えません。増えるのは、応募をためらっている人の判断材料になる情報が載ったときです。デザインを新しくしても、載っている情報が会社概要と事業内容のままなら、判断材料は増えていません。

Q. 求人サイトへの掲載をやめて自社サイトに集中すべきですか

やめないでください。調査では求人サイト55.3%、ハローワーク54.2%が主力の経路です。自社サイトは21.4%で、入口としては細い。入口は求人サイト、決め手は自社サイト、という役割分担で考えてください。どちらかを捨てる話ではありません。

Q. 動画を作れば情報は充実しますか

内容によります。会社の外観から始まって社長が理念を語る形式の動画は、文章で書いてあることを映像にしただけで、新しい情報は増えていません。応募をためらっている人の判断材料になっているかどうかが分かれ目です。何を見せるべきかは採用動画の制作会社の選び方|見積もりで必ず確認する7項目で、発注前に決めておくこととして整理しています。

Q. 調査の%を実施率として使っていいですか

使えません。5つまでの複数回答なので、合計が100%を超えます。「挙げた企業の割合」として読んでください。社内資料に転記するときも、設問が複数回答であることを併記してください。

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出典 日本政策金融公庫総合研究所「中小企業における従業員の採用・定着に関する調査」結果(2026年6月19日公表)

三上 渉吾

Pinmov / ディレクター

地上波テレビ通販番組の制作に6年間携わる。専門は、応募や購入につなげる動画の構成。
現在はPinmovで、採用動画・広告動画・企業YouTubeの企画と構成を担当。

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